Nina Ottosson(ニーナ・オットソン)の犬のおもちゃシリーズ

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ニーナ・オットソンさん、北欧のイヌ教育玩具発明家

文と写真 藤田りか子

「必要は発明の母といいますが、わたしはその典型です」

「子供がうまれてから以前みたいに愛犬の世話がままならなくて、すごく罪悪感を感じていました。家の中でいかに彼らを飽きさせず、犬らしく過させる方法はないか?」

それがニーナ・オットソンさんがイヌのアクティブ玩具発明にいたった理由だ。
ニーナさんの商品は最初のアクティブ・ボールに始まり、その後次々とヒット。そして今や世界中のペットショップの定番アイテムとなった。

「イヌは、単に体をつかわせてあげれば、幸せを感じるというわけではないのですね。頭への刺激だって必要なんです」

最初に彼女が考えたのは、トイレット・ペーパーのから筒に食べ物を隠し、両端に封をして犬に探させる、という遊び。その思い付きが、いつしかビジネスアイデアに発展したのだ。彼女のデビュー作であるアクティブ・ボールの発明背景には、ニーナさんのイヌという動物への深い理解があった。

この商品は最初に北欧で大ヒットを記録、なんと10万個が売られた。アクティブボールとは、ボールの中に入れた食べ物が、イヌが転がす度に、表面の小さな穴からでてくる仕組みの玩具。今でこそ、このタイプの商品は珍しくないが、実はそのオリジナル・アイデアはニーナさんのもの。それが80年代。この商品のために、「教育玩具」とか「知育玩具」なる新しい言葉も生まれた。

その後、「ドッグ・スマート」、「ドッグ・スピニー」など、次々と新しい教育玩具が彼女のオリジナルのアイデアによって登場。いずれも大ヒットとなった。どのアイテムも、そのコンセプトは、食べ物をあるところに隠して、イヌに鼻を使わせ探させるということ。イヌにイヌらしいことをさせてあげ、そして喜びをもたらしてあげる。ニーナさんは、1989年、2004年にはスウェーデンの発明大賞をも受賞した。

「発明大賞の受賞者はたいてい男性が優勢だったんですけれど、嬉しいです。女性のアイデアが評価されるというのは!」 とニーナさん。

「必要は発明の母といいますが、その意味で私は典型的な女性発明家だと思いますよ。男性の発明品は必要があとからついてくるものですから。」

彼女はアクティブ・ボールの成功後、93年にZOO ACTIVEという会社を興し、ペットアイデア企業家として大活躍中だ。
イギリスの有名な獣医や、ロジャー・マグフォードなどイヌの心理学者によっても、イヌの行動セラピー・アイテムとして推薦されている。

 

愛犬にインスピレーションをもらう

ところでニーナさんの前職は意外にも、看護婦さん。その頃はイヌはあくまでもホビーだった。服従競技会に出場するなど、アクティブにドッグスポーツに参加していた。現在の彼女のイヌも、ドッグスポーツに秀でた犬種、ブービエ・デ・フランダースだ。ジャーマン・シェパードと同様に、警察犬作業(足跡追求、防衛など)が大得意なイヌである。

でもニーナさんの愛犬ってもしかしたら実験動物でもあるのだろうか?

「シッゲ(愛犬の名)には本当によく助けてもらっています。こんな新製品はどうだろう、って。弟の工場でプロトタイプを作ってもらう。その機能、性能をシッゲがチェックしてくれます」

ドッグピラミッドという起き上がりこぼし式のイヌ玩具は、シッゲの大のお気に入り。ということはつまりシッゲのお墨付き商品でもある。アクティブ・ボールと同様に中に食べ物が入っているのだが、犬が倒してもなかなか倒れず、食べ物が簡単に転がってこないところがミソ。だからイヌはなんとか食べ物を得ようと、ピラミッドを押したり倒したり余計に頑張りだす。

「ただ、単に食べ物をもらう、というのではイヌはそれほど満足しないんですね。こうやって何かチャレンジした末に、報酬が出る。だからやりがいがあって、面白い。イヌの精神の幸せって、やっぱり人間と同じなんですよ」

ニーナさんの言葉を借りれば、人間がクロスワードパズルとか、ゲームに興じるのも、頭への刺激が欲しいから。イヌだって精神的刺激を欲している、ということ。彼女はそれを「メンタルへの刺激」「メンタルの体操」と呼ぶ。

 

イヌの行動セラピー道具として

スウェーデンには多くのイヌの問題行動セラピストがいる。そのほとんどが、ニーナさんの製品をセラピー道具として飼い主に推薦しており、またセラピー治療の中で使っている。ストックホルムのイヌ学を学べる高校でも、ニーナさんの教育玩具を使いながら、どうセラピー・アイテムとして活かせるか、を生徒に教えているほどだ。

シッラ・ダニエルソンさんは、スウェーデンにおける問題行動犬セラピストのパイオニア的存在。ストックホルムにおいて初めて大大的にドッグ・カウンセラー養成学校を開いた女性でもある。シッラさんはニーナの知育玩具をセラピー道具として使う理由をこう話してくれた。

「どうやったら欲しいものを手に入れられるか。イヌは考えたり、試したりする。ニーナさんの教育玩具で、イヌはそういう遊びができるんです。これはイヌの集中力をすごく高めます。特にセカセカしたストレス気味のイヌの治療にいいですね。考えたり、集中するには落ち着かなければいけませんから」

たとえば、ニーナさんの大ヒット製品の一つでもあるドッグ・スマート、そして新製品であるドッグ・ファイター。トリーツ(食べ物)をコップの下に隠し、それを嗅覚でさがさせる。しかし、トリーツに至るにはコップをどかさなければならない。あるイヌはくわえて、コップをどかせることを学び、あるイヌは鼻でつっついて倒すことを学ぶ。ただしドッグ・ファイターではコップはつっついただけでは倒れない。コップを溝の先端までくわえてもってこないと離れない仕組みになっているのだ。このからくりを、イヌは試行錯誤によって覚えていく。

「こうやってもだめ、ああやってもだめ、でもあるとき、成功する瞬間があるんです。たとえば、たまたまくわえてこっちへちょっと寄せたらコップが離れた。そしてトリーツに行き着く。報酬を得ることで、イヌはその成功に導いた「行動」を学習します」

あの行動をやったら、おいしいものが得られた!この思い出をイヌは記憶にとどめ、また次の機会も同じ行動をとろうとする。

「学ぶ、ということ自体、すごくいいセラピーになるんですね。イヌにとって。まず、自信がつくでしょう?やれば、できるんだ!って。問題行動を取る犬は、実は怖がりだったりして自信がないイヌが多いんです。だから何かやらせて、気持ちを豊かにさせる。大事なことです」 とシッラさん。

 

イヌといっしょに遊ぶ機会を作るため

ニーナさんが強調するのは、愛犬と正しき良き関係を結ぶには、まず私たち飼い主はイヌといっしょに何かをする機会をもっと持つべき、ということ。

「イヌのメンタル刺激として私の知育玩具を使う。だけど、それをイヌにただ渡して、ほうっておくのではなく、飼い主もかならずそばにつくことですね」

たとえば、玩具に食べ物を隠している間、イヌにはお座り、とか伏せ、をさせて待たせる。遊びながら、イヌにしていいこと、今してはいけないこと、のけじめを与える機会が設けられる。

「待てば、楽しいことが起こる。そしてその楽しいことというのは、飼い主といっしょにいる状況で起こった…と、イヌの思考回路としては<飼い主の側にいる=楽しいことが起こる>。と、イヌはますます飼い主に対して集中するようになります」

しつけがなかなかうまくいかないのは、イヌが飼い主にほとんど注意をはらってないためだとも。

「スウェーデン人はよく森に出て犬を遊ばせるんですが、ただリードから放して走らせるのではなく、木の株や岩の下にトリーツを隠して犬に嗅覚でさがさせる、というゲームやります。これだと飼い主といれば、面白くて楽しいことが起こる!って学習してくれるでしょう?のみならず、イヌの嗅覚の欲求を満たしてあげることもできます」

森がない都会だからこそ、ニーナさんの知育玩具はより意味をもつということ?

「そうなんです。私の製品は、特にドイツですごくヒットしているんです。もう生産がおいつかないくらい(笑)!なぜかと考えたんですけど、ひとつにドイツ人ってすごく犬が好き。イヌ人口も多い。もうひとつに、ドイツはやっぱり都市がひしめいている国でしょう?都会でよりイヌをアクティブに、それも手軽にやろうと思えば、こういう知育玩具って活きてくるんですね」

そして日本のイヌたち、愛犬家にもこうメッセージをくれた。

「日本も多くが都市に住んでいますよね。都市だと、なかなかイヌに嗅覚を使わせて楽しいゲームをする機会もないでしょう。だから知育玩具で簡単に、室内で、あるいはテレビでも見ながら、イヌの頭をアクティブにしてあげる、愛犬にとって大事なことだと思います。」

Nina Ottosson。愛犬にかこまれて、イヌはブービエド・フランダース

ドッグブリックで遊ぶ。トリーツを入れている間、ちゃんとお座りと待てができる。こうして遊びながら、イヌのしつけもする。

よく待てたね、さぁ、遊んでいいよ!

工場はフル稼業!注文が殺到して、生産がおいつかないほど。新しい機械も導入した。

オフィスにて

これがなかなか難しいけれど、とても面白いドッグファイター。カップがすぐにとれないのがミソ。端に一度ずらさなければならない。試行錯誤で学んでもらう。

Ninaの製品はドイツのイヌ雑誌でもよく紹介されている。イヌのIQテストと紹介した記事をみせてくれた。

発明大賞をとったときのトロフィ。ダイナマイトの発明者、アルフレッド・ノーベルの像。彼女の住む街、カールスコーガが実はノーベルの出身地でもあった。

藤田りか子
動物ライター。スウェーデン、ヴェルムランド在住。横浜で育つ。オレゴン州立大学野生動物学科を経て、スウェーデン農業大学野生動物管理学科にて修士学号を得る。現在日本とスウェーデンの犬及び馬雑誌にフリーランス・ライターとして執筆中。ペットは、ネコ2匹、イヌ2匹、馬3頭